研究内容の概要:
これまでの先行研究では,軽負荷の反復運動後に,一次運動野の興奮性が低下する現象(運動後抑制)が生じることが報告されてきました(Miyaguchi, 2013).また運動後抑制は,運動課題に用いる筋収縮の強度や様式などに依存して抑制度合いが変化することが明らかになっておりました(Miyaguchi, 2016).しかし,運動後抑制期間中に皮質内の抑制回路の興奮性がどのように変化しているのかについては詳細が明らかにされていませんでした.そこで本研究では,軽負荷の手指の反復運動課題後に生じる運動後抑制期間の皮質内抑制の変化を検討しました.その結果,運動後抑制期間には,GABAA系の抑制回路の指標となる短間隔皮質内抑制(SICI)は変化しないものの,GABA系やコリン系の抑制回路の指標となる短潜時求心性抑制(SAI)が低下することを明らかにしました.つまり,運動後抑制期間にはGABA系やコリン系の抑制回路の働きが低下している可能性が示唆されました.
本研究成果は,国際誌『Brain and Behavior』に掲載されました.
研究者からのコメント:
今回の研究では,軽負荷の反復運動課題後に,一次運動野の興奮性が低下するとともに皮質内の抑制回路の興奮性も変化していることが明らかになりました.今後,この現象についてさらなるメカニズムの解明を進めることで,リハビリテーション分野における中枢神経疾患患者に対する運動療法の介入効果の向上が期待されます.
本研究成果のポイント:
① 右示指の等張性外転運動を最大随意収縮の10%強度にて6分間,2 Hzの頻度で実施しました.
② 運動課題後1-2分間,一次運動野の興奮性の指標となる運動誘発電位(MEP)の振幅が低下するとともに,GABA系やコリン系の皮質内抑制回路の興奮性の指標となる短潜時求心性抑制(SAI)が低下していることが明らかになりました.
原論文情報;著者名、論文タイトル、雑誌名、巻号、ページ、西暦年、doi
Shota Miyaguchi, Sho Kojima, Ryoki Sasaki, Shinichi Kotan, Hikari Kirimoto, Hiroyuki Tamaki, Hideaki Onishi. Decrease in short-latency afferent inhibition during corticomotor post-exercise depression following repetitive finger movement.