★M1と小脳に対する交流電流刺激で運動パフォーマンスが向上することを解明!!(2018.06.13)

宮口翔太助教(理学療法学科,神経生理Lab,運動機能医科学研究所所属)らの研究論文が『Frontiers in Behavioral Neuroscience』に採択されました‼

宮口先生は,脳の機能や活動について研究をしています.今回はのうを刺激する交流電流を用いた研究で,細かな動作である巧緻機能が変化させるために必要な脳の刺激方法を検討した研究です.研究の詳細と宮口先生からのコメントは以下の通りです.

研究内容の概要:

人の運動遂行機能を向上させるための最適な脳刺激法は十分にわかっていません。私たちの研究グループは、運動に関与する脳領域である一次運動野(M1)と小脳領域を交流電流により刺激することで、刺激中に手指の巧緻動作が向上することを発見しました。またこの効果は運動が巧くない人ほど効果が認められました。

本研究成果は,国際誌『Frontiers in Behavioral Neuroscience』に掲載予定です.

宮口先生からのコメント:

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これまで人の運動遂行機能を向上させるには,一次運動野の興奮性を向上させることが重要であると言われてきましたが,十分な効果は得られていませんでした.本研究は、近年注目を集めている経頭蓋直流電流刺激(tACS)を用いて一次運動野だけでなく小脳の活動も変調することにより、各領域を単独で刺激するよりも巧緻動作が向上するという新たな事実を提示、実証するものです。今後はより最適な刺激方法を検討し、運動遂行機能を向上させる最適な介入方法の開発につなげたいと考えております。

本研究成果のポイント:

健常成人20名を対象に、4つの刺激条件(①M1だけを刺激する条件、②小脳だけを刺激する条件、③M1と小脳を刺激する条件、④疑似刺激条件)を用いて、刺激中の運動遂行機能を評価しました。また実験1では、70 Hz(γ帯域)の刺激周波数、実験2では、20 Hz(β帯域)の刺激周波数を用いて刺激効果を検討しました。運動遂行機能の評価には、右示指の外転運動による視覚追従課題を用いました(図1).

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その結果、M1と小脳領域を70 Hz(γ帯域)の刺激周波数で同時に刺激することにより、各領域を単独で刺激するよりも巧緻動作が向上する効果をもたらすことを発見しました。またこの効果は、運動が巧くない人ほど効果が認められることを発見しました(図2)。

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またこの効果は、20 Hz(β帯域)の刺激周波数では認められなかったことから、tACSの刺激効果には周波数特異性があることが明らかになりました(図3)。

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原著論文情報
  

Miyaguchi S, Otsuru N, Kojima S, Saito K, Inukai Y, Masaki M, Onishi H. Transcranial alternating current stimulation with gamma oscillations over the primary motor cortex and cerebellar hemisphere improved visuomotor performance. Frontiers in Behavioral Neuroscience (2018).