本学科の高林知也助教(理学療法学科,バイオメカニクスLab,運動機能医科学研究所所属)の研究論文が国際誌『Journal of Foot and Ankle Research』に受理されました!!
高林先生はこれまでバイオメカニクスアプローチにより足部障害について研究を行っております.今回は,ランニング中の後足部,中足部,前足部の協調運動パターンには性差が存在する!!ということをダイナミックシステムアプローチを用いて解明しました.
研究内容の概要:
近年,年齢問わず健康増進の目的でランニング人口が増えており,特に女性ランナーが劇的に増えています.その一方で,ランニングによるオーバーユース障害の発生率も増加の一途をたどっており,足部ランニング障害は女性が男性と比較して2倍発生しやすいというデータが報告されています(Frisch et al, 2009, Scand J Med Sci Sports).そこで,我々はこれまでランニング中に足部内の動きには性差が存在することを発見しましたが(Takabayashi et al, 2017, Eur J Sport Sci),女性に頻発しやすい足部障害の発生メカニズムを解明するには至りませんでした.
近年では,ダイナミックシステムアプローチという手法を用いてセグメント間の協調性を定量化し,協調性の観点から障害発生メカニズムを解明するという試みが行われています(Takabayashi et al, 2016, Sport Biomech; Takabayashi et al, 2017, J Foot Ankle Res).
本研究では,この手法を用いて足部内の協調運動の性差を明らかにすることで女性に頻発する足部障害の発生メカニズムを調べました.その結果,女性は男性と比較して足部内でanti-phaseと呼ばれるねじれの動きが多く出現しており,かつ後足部と中足部が過剰に動いていることが明らかになりました.
高林先生からのコメント:
近年,女性アスリートがめざましい活躍をしており,オリンピックイヤーも近いなか女性におけるオーバーユース障害の発生メカニズムを解明することは社会的に非常に意義が高いと考えています.本研究結果より,女性は男性と比較して足部内でねじれの動きが多く出現しており,かつ後足部と中足部が過剰に動いていることを解明しました.ねじれの動きや過剰な動きは障害発生に関与することが示唆されているため,本研究は足部ランニング障害の発生メカニズムの一端を明らかにした研究であると考えています.さらには,足部障害の予防や治療展開への基礎データになることも期待できると考えています.
本研究成果のポイント:
① ダイナミカルシステムアプローチを用いて協調性パターンを明らかにした点
② 後・中足部(c),中・前足部(d)の協調性パターンにおいてanti-phase with proximal dominancy(ねじれの動きかつ近位セグメントの動きが大きい)の割合が多かった点
③足部内のCoordinative variability(協調運動の変動性)には性差が無かった点
原著論文情報
Takabayashi T, Edama M, Inai T, Kubo M. Sex-related differences in coordination and variability among foot joints during running. Journal of Foot and Ankle Research. 2018.