M1と小脳の神経ネットワーク強化により運動パフォーマンスが向上する!ことを発見!!(2018.11.09)

宮口翔太助教(理学療法学科,神経生理Lab,運動機能医科学研究所所属)らの研究論文が『Neuroscience letters』に採択されました‼

宮口先生は,脳の機能や活動について研究をしています.研究の詳細と宮口先生からのコメントは以下の通りです.

研究内容の概要:

運動パフォーマンスの向上には、一次運動野(M1)と小脳領域の神経ネットワークが重要な要素の一つとされています。本研究では、脳の律動活動を変調することができる経頭蓋交流電流刺激(tACS)を使って、M1と小脳領域を同時刺激することで、刺激中に運動パフォーマンスの向上が認められました。この結果は、すでに報告した我々の研究結果(Miyaguchi, 2018)を再現するものでした。また本研究により、この効果機序には、M1と小脳領域間の神経ネットワークの変化が関与していることが示唆されました。

宮口先生からのコメント:

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我々が円滑かつ巧みな運動を遂行するためには、M1領域だけでなく、他の運動関連領域(小脳、大脳基底核、高次運動野領域など)が適切に機能する必要があります。本研究では、M1と小脳領域が形成する神経ネットワークに着目し、経頭蓋交流電流刺激(tACS)を用いてM1と小脳間の神経ネットワークを強化することで、運動パフォーマンスを人為的に向上させることができるという新たな事実を提示、実証するものです。今後は、この刺激方法を応用することで、運動学習効率を向上させる新たな介入方法の開発に取り組んでいきたいと考えています。

本研究成果のポイント:

本研究は、M1および小脳半球に対する経頭蓋交流電流刺激(tACS)の効果に位相特異性があるか否かを明らかにすることを目的とした。対象は健常成人20名であった。tACS(1.0 mA、70 Hz)の電極貼付部位は、左M1、右小脳半球、右肩とした。刺激条件は、①M1と小脳半球上の電極に流れる電流の位相が同位相の条件、②逆位相の条件(逆位相条件)、③疑似刺激条件(コントロール条件)の3条件とした。刺激時間は各条件30秒間とし、各条件介入中に右示指による視覚追従課題を行い、課題のエラー値を比較した。

①疑似刺激条件(コントロール条件)に比べ、M1と小脳を同時刺激した逆位相条件のエラー値が低値となった(p=0.021)。同位相条件では、同様の結果は認められなかった。

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②疑似刺激条件(コントロール条件)においてエラー値が大きい人ほど、逆位相条件においてエラー値が小さい値となった(p=0.002,r=-0.649)。同位相条件では、同様の関係性は認められなかった。

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原著論文情報
  

Shota Miyaguchi, Naofumi Otsuru, Sho Kojima, Hirotake Yokota, Kei Saito, Yasuto Inukai, Hideaki Onishi. Gamma tACS over M1 and cerebellar hemisphere improves motor performance in a phase-specific manner. Neuroscience letters (2018).