★ 歩行速度の低下は立脚期の股関節内・外転モーメントインパルスを増加させることを解明!(2019.10.29)

稲井卓真さん(大学院博士後期課程3年生、バイオメカニクスLab、運動機能医科学研究所)らの研究論文が国際誌『PeerJ』に採択されました!稲井さんは、大学院博士後期課程に在学中において国際誌への採択が6本目であり、今後の活躍も期待しています!

研究内容の概要

変形性股関節症は高齢女性に頻発する整形外科疾患です。近年、変形性股関節症のリスクファクターのひとつとして股関節累積負荷(股関節内・外転モーメントインパルスと1日の平均歩数との積)が報告されており、この指標を低減させることで変形性股関節症の進行を遅延できる可能性があります。そのため、近年では様々な歩行様式と股関節内・外転モーメントインパルスの関係性が報告されています(Inai et al., 2018, Gait & Posture; Inai et al., 2019, Gait & Posture)。多くの先行研究によれば、変形性股関節症患者は健常人と比較して歩行速度が低下すると報告されていますが、歩行速度の低下と立脚期の股関節内・外転モーメントインパルスの関係性は不明です。そこで、私たちは歩行速度の低下が立脚期の股関節内・外転モーメントインパルスに与える影響を検討しました。その結果、以下に示す知見を得ることができました。

1.歩行速度の低下は立脚期の股関節内・外転モーメントインパルスを増加させる。

2.歩行速度と立脚期の股関節内・外転モーメントインパルスの関係は非線形である。

稲井さんからのコメント

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本研究の知見は、変形性股関節症の進行を遅延させるための一助となる可能性があると考えています。今後も股関節に負担が少ない歩き方や動作を解明していきたいと考えています。

本研究のポイント

① 歩幅の違いは股関節累積負荷に影響を与えるため、股関節モーメントインパルス(Nms/kg)を歩幅(m)で正規化した点(歩幅で正規化することにより、間接的に股関節累積負荷の変動を観察することが可能)。

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② 歩行速度の低下により立脚期の股関節内・外転モーメントインパルスが非線形に増加した点。

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原著論文情報
  

Inai T, Takabayashi T, Edama M, Kubo M. Decrease in walking speed increases hip moment impulse in the frontal plane during the stance phase. PeerJ. 2019. in press.