稻垣優太さん(神戸市立医療センター中央市民病院,理学療法学科14期生,修士課程急性期理学療法コース修了)と椿淳裕教授(理学療法学科,運動生理Lab,運動機能医科学研究所)らの研究論文が国際誌「Int J Environ Res Public Health」に掲載されました!!
研究概要:
中強度の有酸素運動は年齢を問わず前頭前野(PFC)の酸素化や認知機能の改善に関与しています.一方,男女の違いがPFCの酸素化や認知課題時の反応に影響すると報告されておりますが,男女の違いを考慮した有酸素運動時のPFCの酸素化動態は明らかではありません.本研究では有酸素運動時におけるPFCの酸素動態を男女間で比較しました.その結果,神経活動の賦活を反映する酸素化ヘモグロビンの変化には男女差を認めませんでした.一方で,酸素を切り離したヘモグロビン(脱酸素化ヘモグロビンHHb)は男性で有意に増加しました.
稻垣先生からのコメント:
本研究では、有酸素運動時のPFCの酸素動態を男女間で比較しました。結果として、HHbが男性で有意に増加しました。この結果には,脳血管系に関与する性ホルモンの違いが関連している可能性を考えていますが、まだこの検証はできていません。性ホルモンの作用を考慮した上で更なる検討を行うことができれば、実際の患者さんに対する運動療法もしくは処方を行う上での一助になると思われます。
研究成果のポイント
・本研究では健常成人20名(うち女性10名)を対象に30分間の有酸素運動を実施しました(図1)。
・また、近赤外分光法を用いてPFCにおける酸素動態を計測しました(図2)。
・運動中盤~後半において、女性と比較して男性のHHbが有意に増加しました(表1)。
原著論文情報
Yuta Inagaki, Reo Sato, Takashi Uchiyama, Sho Kojima, Shinichiro Morishita, Weixiang Qin and Atsuhiro Tsubaki. Sex Differences in the Oxygenation of the Left and Right Prefrontal Cortex during Moderate-Intensity Exercise. Int J Environ Res Public Health 2021, 18(10), 5212; https://doi.org/10.3390/ijerph18105212.