肘関節への持続的な外反ストレスにより肘関節外反不安定性が増加することを明らかにしました!
生田智也さん(理学療法学科17期生,神戸市立医療センター中央市民病院)と江玉睦明教授(理学療法学科,スポーツ医科学Lab,アスリートサポート研究センター,運動機能医科学研究所)らの研究論文が国際誌『Orthopaedic Journal of Sports Medicine』に掲載されました!
【研究の概要】
野球選手では,肘の内側に傷害が好発します.その要因として,投球時に肘内側(肘尺側側副靭帯)に反復的な外反ストレスが加わることが考えられています.しかし,反復的な外反ストレスにより,肘関節の外反不安定性がどのように変化をするのかについては,実際には十分に検討されていませんでした.近年,肘関節の外反不安定性を定量的に評価する方法として腕尺関節離開距離が使用され,弛緩性の評価や肘尺側側副靭帯損傷の評価にも有用であると報告されています.そこで我々は,肘関節への持続的な外反ストレスが,肘外反不安定性にどのような影響を及ぼすかを検討しました.その結果,低負荷(30N)の外反ストレスを持続的(300秒間)に加えた際に,60秒以降に腕尺関節離開距離が有意に増加しました.従って,反復的(本実験では持続的な負荷)な外反ストレスを加えると肘関節外反不安定性が増加する可能性が示唆されました.本実験結果は,投手における過度な投球数が肘関節に悪影響を及ぼす可能性を示す有用な知見と考えます.
【生田先生・江玉先生からのコメント】
今回の基礎的な知見を活かして,今後は,傷害を持った野球選手の特性を検討していき,傷害予防や治療方法の考案に向けて研究を重ねていきたいと思います.
【研究成果のポイント】
1. テロスストレス装置と超音波画像装置を用いて肘外反不安定性(肘腕尺関節離開距離)を評価した点.
A:テロスストレス装置,B:超音波画像(腕尺関節の長軸像)
*腕尺関節離開距離(点線):上腕骨滑車内側遠位端から尺骨鈎状結節近位端の距離
2. 低負荷(30N)の外反ストレスを300秒持続的に加えて肘外反不安定性の変化を検討した点(60秒以降で離開距離が増加=肘関節外反不安定性が増加).
原著論文情報
Ikuta T, Yoshioka K, Matsuzawa K, Maruyama S, Edama M. Influence of continuous elbow valgus stress on the medial elbow joint space. Orthopaedic Journal of Sports Medicine