★ フォームローリングにより性別に関係なく関節の柔軟性を改善させることを明らかに!!(2021.07.12)

清野涼介さん(伊藤超短波株式会社,理学療法学科15期生,修士課程修了,応用理学療法Lab)と中村雅俊先生(理学療法学科,応用理学療法Lab,運動機能医科学研究所)が行った研究論文が,国際誌『Journal of Sports Science & Medicine』に採択されました!!

今回の研究では,スポーツ現場で用いられることが増えてきたフォームローリングが関節の柔軟性に及ぼす影響についての研究です.先日紹介した報告では反対側に対するフォームローリングの効果(クロスエデュケーション効果)についてでした(https://www.nuhw-pt.jp/2021/06/-20210625.html)が,今回は,このフォームローリングが男性と女性で効果が異なるのか?ということを研究しました.その結果,男性と女性で同じような変化をするということが明らかになりました.具体的には,関節の柔軟性や痛みに対する感じ方の変化については男性・女性関係なく増加するということです.

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前回の報告同様,実験を中心的に頑張ってくれた清野さん

研究の概要

最近,スポーツ選手のセルフケアグッズとして下に示すようなローラー状のセルフケアグッズ,ローリングマッサージャーの使用する人が増えています.我々の研究グループではこれまで形状は違いますすが,フォームローリングをすることで関節の柔軟性が増加することを証明しております(Nakamura et al., 2021, Kiyono et al., 2020).今回は,その研究を発展させる内容ですが,これまでの研究では,男性よりも女性の方がローリングの効果が大きく,関節の柔軟性の増加が生じやすい可能性が示されていました.しかし,その効果を直接,男女で比較した研究や,もしも女性の方が大きく関節の柔軟性が増加するのであれば,その理由などを明らかにした研究はありませんでした.そこで,我々は,先日紹介した研究と同じ方法で男性と女性でローリングした際の関節の柔軟性の変化の比較とそのメカニズムを明らかにしようとしました.その結果,男性と女性では関節の柔軟性の変化は同じ程度であり,そのほかの項目の変化も同じような変化を示しました.これらの結果より,ローリングを適切な方法・時間行うことで性別に関係なく,関節の柔軟性は増加することが分かりました.また,その関節の柔軟性の増加には筋肉の柔軟性や脊髄興奮性などが関連するのではなく,痛みに対する感じ方が関連していることが分かりました.

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中村先生からのコメント

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フォームローリングはストレッチに代わるセルフケア手法として徐々に認知が増えてきている手法です.しかし,実際にスポーツ現場で使用はされておりますが,その効果やメカニズムについてはわからないことが多いというのが現状です.前回の研究ではクロスエデュケーション効果,今回の研究では性差に着目してフォームローリングの効果について調査しました.これらの結果をまとめると,ローリングを適切に行うと,性別に関係なく関節の柔軟性を増加させることが可能であるため,様々な現場で使用することが推奨できるかと思います.ただ,筋肉の柔軟性については変化することが出来なかったので,筋肉が硬くなっている人を対象とした場合の新しい介入方法については今後,明らかに出来ればと思い,研究を進めていますので,また何かわかり次第,紹介できればと思います.

 
  
原著論文情報
  

Nakamura M, Konrad A, Kiyono R, Sato S, Yahata K, Yoshida R, Murakami Y, Sanuki F, Wilke J. Sex differences in the mechanical and neurophysiological response to roller massage of the plantar flexors. Journal of Sports Science and Medicine. in press