鈴木祐介先生(理学療法学科,ヘルスプロモーションLab,運動機能医科学研究所所属)の研究論文が「PLoS ONE」に掲載されました.
鈴木先生は多くの高齢者が困る変形性膝関節症に関する研究を数多く行っており,今回は筋力の一つの指標であるRFDに着目した研究です.研究の詳細は以下のようになっております.
研究内容の概要:
変形性膝関節症 (膝OA) 患者において,大腿四頭筋の筋力は膝軟骨変性の重症度との関連が報告されており,膝OAにおける大腿四頭筋の筋力はリハビリテーションの重要なターゲットになっています。しかし近年着目されている,筋力を瞬発的に発揮する能力を示すRate of Force Development (RFD) と膝軟骨変性との重症度との関連性は明らかになっていませんでした。そこで本研究では,膝OA患者における大腿四頭筋のRFDと膝軟骨変性の重症度との関連性を検証しました。その結果,膝軟骨変性が重症である対象者は,有意に大腿四頭筋のRFDが低いことが明らかになりました。
鈴木先生からのコメント:
本研究は京都府の地域在住高齢者の中から,レントゲン撮影によって診断された膝OA患者 (K&L grade 1以上) 66名を対象としました。対象者にハンドヘルドダイナモメーターによる大腿四頭筋の筋力を測定し,その結果から大腿四頭筋のRFDを算出しました。その後,大腿四頭筋のRFDと膝軟骨変性の重症度 (K&L grade) との関係性を解析しました。その結果,膝軟骨変性が重症 (K&L grade 3-4) の対象者は,そうでない対象者 (K&L grade 1-2) と比較して,有意に大腿四頭筋のRFDが低下していました。この結果より,膝OA患者の大腿四頭筋に対するリハビリテーションを実施する際には,RFDに着目する必要性が明らかになりました。
本研究成果のポイント:
Ⅰ. 膝軟骨変性の重症度と大腿四頭筋RFDとの関連を調査した件
本研究の結果の一部です。
膝軟骨変性が軽度の対象者 (a) と比較して,重度の対象者 (b) では大腿四頭筋のRFD (一定の時間間隔における筋力変化の勾配) が有意に低下していることが分かります。
原著論文情報
Suzuki Y, Iijima H, Nakamura M, Aoyama T. Rate of force development in the quadriceps of individuals with severe knee osteoarthritis: A preliminary cross-sectional study. PLOS ONE. In press.