研究内容の概要:
近年,加齢に伴う骨格筋量減少・骨格筋機能低下を示す「サルコペニア」が注目されています.サルコペニアは老年学上最も重要なトピックの一つであり,サルコペニアの一次予防・重症化予防は喫緊の課題とされています.また,サルコペニアの主要な要因の一つに「炎症」があり,今回は食事誘発性の炎症とサルコペニアの関連に着目しました.
本研究では,国立長寿医療研究センターのフレイル外来に通う患者を対象に,サルコペニアと食事誘発性炎症の関連について検証しました.その結果,食事誘発性の炎症が高くなるとサルコペニアの可能性を高める結果となりました.一方で,熱量やたんぱく質量で調整するとその関連性は消失し,この集団では,食事による「炎症」よりも,たんぱく質などの「量」がサルコペニアとより強い関連性を有している可能性が示唆されました.
研究者からのコメント:
井上達朗講師(理学療法学科,運動生理Lab,運動機能医科学研究所)
本研究は,国立長寿医療研究センター老年内科との共同研究です.食事誘発性の炎症を非侵襲的に算出し,サルコペニアとの関連を調べたことは,有益であると考えております.
著論文情報:
Inoue, T., Shimizu, A., Ueshima, J. et al. Diet-induced inflammation is associated with sarcopenia and muscle strength in older adults who visit a frailty clinic. Aging Clin Exp Res (2022). https://doi.org/10.1007/s40520-022-02195-9