2022年10月1日(土)~2日(日)に第28回医用近赤外線分光法研究会・第26回酸素ダイナミクス研究会合同研究会が鹿児島で開催されました. この合同研究会は,脳や筋肉といった様々な臓器の細胞における酸素輸送を専門とする研究者が日本各地から集まる研究会であり,3年ぶりに対面での開催となりました.本学からは,教員の椿淳裕教授,大学院修了生の今井遼太さん (魚沼基幹病院,令和2年度修士課程修了),大学院生の修士課程2年の鷲澤玲央さん (神戸市立医療センター中央市民病院,理学療法学科17期生),齋藤寛代さん (小田原市立病院,理学療法学科17期生),一杉直樹さん (理学療法学科17期生),学部4年生の宮嶋大貴さん (理学療法学科19期生)が口述発表を行いました.宮嶋さんは,初めての学外での発表で緊張した様子でしたが,落ち着いて発表と質疑応答を行いました.学部4年生で口述発表を行うことは素晴らしいです!!
発表者名, 演題タイトルは以下の通りです.
シンポジウム
椿淳裕.運動時の脳計測とリハビリテーション領域での利用の可能性.
口述発表
今井遼太,椿淳裕,阿部貴文,山口征吾.集中治療室入室患者における離床時の脳酸素化反応とバイタルサインの経時的変化の比較 ~敗血症患者と心不全患者での比較~.
鷲澤玲央,岩田健太郎,滝本龍矢,稲垣優太,前川侑宏,佐藤大地,生田智也,椿淳裕.冠動脈バイパス術後患者における心肺運動負荷試験中の前頭前野での脳酸素飽和度変化の一例.
齋藤寛代,内山祈,小澤祐治,新山祐貴,平田萌々花,小澤哲也,佐藤隆一,堀田一樹,椿淳裕,鈴木良介,霜田直史,井上達郎.近赤外分光法を用いたSTA-MCAバイパス術後離床時の過灌流評価.
一杉直樹,堀田一樹,池上諒,高見澤怜,田宮創,井上達郎,椿淳裕.アスコルビン酸は敗血症モデルラットにおける筋収縮後の骨格筋酸素分圧の回復を遅延させる.
宮嶋大貴,松橋日和,馬場啓貴,中田舞絢,井上達郎,田宮創,池上諒,椿淳裕.急性の血圧低下を繰り返すことによる平均血圧と脳の酸素化動態の変化.
発表者6名からのコメントです.
椿淳裕教授からのコメント
ヒトは,酸素なしでは生きることができません.各臓器が機能するにも酸素が必要であり,酸素の移動や代謝をモニタすることで,臓器の状態を推測することが行われています.その中で,光技術を用いた計測はリハビリテーションの領域でも活用されており,脳や筋肉を対象とすることが多くあります.運動中の脳をターゲットとした計測について紹介するとともに,リスク管理での利用の可能性について概説しました.データを蓄積し,先駆的な取り組みを進めていきます.
今井遼太さんからのコメント
私は集中治療領域での脳酸素化測定に関する研究を進めていますが,自身の発表では集中治療医の先生からもコメントをいただくことができました.久々の対面開催の研究会で,同じ領域で研究をしている方々と熱く情報交換でき,有意義な時間を過ごすことができました.今回の研究会参加を通して研究を更に発展させていきたいと思っています.
鷲澤玲央さんからのコメント
発表内容に関して他分野の先生方からもご意見、ご指摘を頂くことができました.今回頂いたご意見,ご指摘を参考に将来的には心臓手術後のリハビリテーションの際に「脳のリスク管理」指標としてNIRSの測定データを応用できるように研究を進めていきたいと考えています.
齋藤寛代さんからのコメント
私は,脳卒中患者や血圧低下のみられる内部疾患患者に対して,リスク管理としてNIRSを用いて脳内酸素動態の計測を行っています.今回の学会では,理学療法士以外の領域の先生方からの意見を頂戴し,新たな視点で考察するきっかけとなりました.この経験を活かして臨床研究に取り組んでいきたいと思います.
一杉直樹さんからのコメント
私は,敗血症と呼ばれる重篤な病態に着目し研究を進めています.この度は,私の発表に対し,医師や工学系の先生方より理学療法士とは異なる視点からご意見ご指摘をいただくことができ,大変貴重な経験となりました.本研究会で得た経験を糧として,より一層精進して参ります.
宮嶋大貴さんからのコメント
急性の血圧低下時の脳の酸素化動態について発表させていただきました.今までは,血圧の変動に対しては自動調節能の存在が報告されていましたが本研究では,急性の血圧低下では脳血流の減少を示唆する結果が得られました.しかし,回数による比較をすると,平均血圧と脳血流は別の変化が得られました.これは,脳血流を維持するための機能であることが考えられます.
口述発表の様子.全員,堂々とした発表でした!!
上段左から,椿教授,今井さん,鷲澤さん,
下段左から,齋藤さん,一杉さん,宮嶋さん.