研究内容の概要:
現在,年齢男女問わずランニングの人気が高まっています,その一方でランニング障害の発生率も増加しています.ランニング障害のなかでも,膝前面痛が主症状である膝蓋大腿関節痛症候群は発症しやすく,ランニング競技のアスリートだけではなく,一般的に趣味としてランニングを楽しむランナーにも頻発します.特に,男性と比べて女性の発生率が高く,さらに膝関節回旋肢位も影響することが明らかになっています.しかし,実際にそのメカニズムは不明な点が多いです.
本研究は数理モデルを用いたシミュレーション研究にて,性差と膝関節回旋肢位が膝蓋大腿関節ストレスに与える影響を検証しました.その結果,女性は男性と比較して,どの回旋肢位においても膝蓋大腿関節ストレスが高いことを明らかにしました.
本研究成果は国際誌「Acta of Bioengineering and Biomechanics」に掲載予定です.
研究者からのコメント:
近年ではライフスタイルの「健康志向」化に伴い,老若男女問わず世界中でランニングブームが加速しているため,ランニングを安全かつ楽しく実施するためにはランニング障害の治療法・予防法を確立することは重要となります.膝蓋大腿関節ストレスの増加は膝蓋大腿関節症の発生要因であり,かつ膝関節の痛みにも関連しています.そのため,女性が男性と比較してストレスが高いことは,発症率に性差がある理由を解明できたと考えております.本研究結果が,ランナーに対して少しでも役立つような知見になればと考えております.
本研究成果のポイント:
16,000回以上のシミュレートにて膝蓋大腿関節ストレスを定量化した点.
原著論文情報:
Takabayashi Tomoya, Edama Mutsuaki, Inai Takuma, Tokunaga Yuta, Kubo Masayoshi. Influence of sex and knee joint rotation on patellofemoral joint stress. Acta of Bioengineering and Biomechanics. 2022.11 [accepted].