研究内容の概要:
スポーツ活動において足関節捻挫は発生率が高い外傷です.そして,足関節捻挫を繰り返すことで関節の不安定感が残存し,慢性足関節不安定症(CAI)を発症すると言われています.発症後は足関節捻挫の再発率が高まり,さらに重症度が非常に高い膝前十字靭帯損傷の発生リスクも高まるとの報告もあります.つまり,足関節捻挫を「軽い捻挫だから大丈夫…」などと軽視してはいけない外傷です.
しかしながら,CAIを発症した足関節に対して,足関節捻挫を繰り返す要因となる機能不全の評価を明確に行えていないことが問題視されています.そこで本研究では,姿勢制御時の足圧中心 (COP) の変位量が手掛かりとして,両脚立位から片脚立位への移乗時における足関節のみに特化した姿勢制御能力を検証しました.その結果,CAIを発症している足関節は移乗時におけるCOP移動距離が大きく,また加速度が速いことが明らかになりました.またCAI発症足は,内外側方向へのCOP変位を多用した姿勢制御を行っていることも明らかとなりました.本研究成果は,英文誌『International Journal of Environmental Research and Public Health』に掲載予定です.
研究者からのコメント:
本研究では,足関節捻挫を繰り返すことにより発症する慢性足関節不安定症を有する足関節機能の評価をより詳細に行うことで,他関節の機能でマスクされていた機能不全を明確にすることができました.これにより,足関節捻挫を繰り返す選手に対するリハビリテーションの再構築や,発症予防に対する新たなアプローチになる可能性があると考えています.
本研究成果のポイント:
1.慢性足関節不安定症を発症した足関節は,膝関節伸展位固定での姿勢移乗時に足圧中心の移動距離と加速度が高まることから,股関節機能に依存した姿勢制御をしている可能性が高い点.
2.慢性足関節不安定症を発症した足関節は,片脚での立位姿勢時に内外側方向へのCOP変位を多用した姿勢制御を行っている点.
原著論文情報:
Takanori Kikumoto, Shunsuke Suzuki, Tomoya Takabayashi, Masayoshi Kubo: Center of Pressure Deviation during Posture Transition in Athletes with Chronic Ankle Instability [accepted].