研究内容の概要:
脊髄相反性抑制は,関節運動・歩行・バランス機能に重要な抑制機能であり,脊髄相反性抑制が増強することで,これらの機能が向上することが知られています.近年,脊髄相反性抑制を増強させる介入法が注目されています.我々の前回の研究では,これまでの相反性抑制増強法より介入効果が高い介入法(反復他動運動)を発見しました(Hirabayashi et al., 2019, 2020).さらに,本研究の知見は,相反性抑制増強法介入中の対象者の注意対象に着目をして,対象者の注意を介入対象に向けることで,介入効果を増大させ,持続効果も延長しました.また,武田真依さんが,明らかにした介入法を用いて,運動機能で検証をして,運動機能でも介入対象に注意を向けることで運動機能が向上しました.本研究の成果は国際誌『European Journal of Medical Research』に掲載されます.
研究者からのコメント:
脊髄相反性抑制を増強させる介入法は,近年注目されており,関節運動・歩行・バランス機能を向上させることが明らかにされています.我々は,これまでに効果的かつ効率的な介入法を確立し,本研究は対象者の介入中の注意対象に着目をして検討をしました.介入対象に注意を向けることで相反性抑制が増強し,その介入法を用いて,武田さんが運動機能で検証をして,運動機能の向上を示す結果を示しました.対象者が注意をどこに向けるかで,理学療法の介入効果をさらに向上させる可能性があることが分かりました.
本研究成果のポイント:
図1:各刺激条件の生波形を示し,Singleが単発刺激,IaがIa相反抑制であり,D1がD1抑制を示します.介入対象に注意を向けた相反性抑制増強法は,介入後30分間まで抑制が増強しました.
図2:aがcontrol条件,b:反復他動運動+壁注視条件,c:反復他動運動+モニター注視,d:反復他動運動+足関節注視条件.反復他動運動+足関節注視条件で相反性抑制が最も抑制が増強し,増強の持続効果も30分間持続した.
図3:反復他動運動+足関節注視条件での足関節の運動機能を計測した結果を示す.グレーが介入前,青が介入後を示し,筋活動,筋力,関節運動発揮率で向上を示した.
原著論文情報:
Hirabayashi R, Edama M, Takeda M, Yamada Y, Yokota H, Sekine C, Onishi H. Participant attention on the intervention target during repetitive passive movement improved spinal reciprocal inhibition enhancement and joint movement function.
Eur J Med Res. 2023 Oct 12;28(1):428. doi: 10.1186/s40001-023-01418-7