★小宮先生のご紹介

2022年4月より理学療法学科の助教に着任しました,小宮諒です.鹿児島の養成校を卒業後,広島大学で修士課程と博士課程を過ごしたのち,教員として3年間教育・研究活動に従事しておりました.
これまでは “外部刺激による身体機能の変化”や“足部内在筋のトレーニング方法” に興味を持ち研究を行ってきました.これまでの研究を簡単にご紹介します.

研究紹介
1)本人が知覚しづらいレベルで加える床面の動揺は慢性脳血管疾患者のバランス能力を改善させるか

バランス障害は,脳血管疾患者の主要な障害といわれており(発症率:61~83%),バランス機能の改善を目的とした様ざまな介入が実施されています.この研究では,本人が知覚にのぼらない (ただ立っていると感じる) レベル(重心動揺の15%未満)で動揺を床面から加えることができる機器を使用して,6週間の介入と4週間のフォローアップを行い,慢性脳血管疾患者のバランス能力や身体機能の変化とその持続効果を確認しました.

  

6週間後の介入効果を確認したところ,コントロール群よりも介入群で歩行能力(Timed up and go test)が改善しており(介入前との差:-1.95±0.66秒),この効果は介入を終了した4週後まで持続していることがわかりました(介入前との差:-2.24±0.77秒).あわせて,対象者の歩行に対する自己効力感の指標(Modified gait efficacy scale)を確認したところ,介入を終了した4週後では介入前よりも有意に歩行への自信を獲得していることがわかりました.このことから,本人が知覚しない(しづらい)動揺を加えるだけで慢性脳血管疾患者のバランス能力の改善につながる可能性を示すとともに,ただ不安定なクッションの上で立つ練習よりも高い介入効果が期待できることがわかりました.

2)座位と立位による足趾把持による力発揮時の足部内在筋の活動の違い

足部内在筋の運動は様ざまな種類がありますが,運動実施時の姿勢に関する情報は不足していました.この研究では,足趾把持運動を実施した際の力発揮に伴う足部内在筋の活動を座位(非荷重)と立位(荷重)で行ってもらいその違いを確認しました.足趾把持の最大強度に対して1秒間に10%ずつあげていき80%まで発揮させる課題を実施したところ,座位での足趾把持課題時には最大把持強度の60%以上で,足部内在筋の活動が低くなっていることがわかりました.このことから,筋肥大を目的とした運動プログラムを考える際には,座位のような非荷重下の環境で実施すると十分な運動負荷が獲得できない可能性があり,足部内在筋の運動を考えるうえで姿勢の選択が重要という根拠の1つを示すことができました.

 

原著論文情報:
1)Komiya M, Maeda N, Narahara T, Suzuki Y, Fukui K, Tsutsumi S, Yoshimi M, Ishibashi N, Shirakawa T, Urabe Y, Effect of 6-week balance exercise by real-time postural feedback system on walking ability for patients with chronic stroke: a pilot single-blind randomized controlled trial, Brain science, 2021, 11(11):1493
2)Komiya M, Maeda N, Tsutsumi S, Ishihara H, Mizuta R, Nishikawa Y, Arima S, Kaneda K, Ushio K, Urabe Y, Effect of postural differences on the activation of intrinsic foot muscles during ramp-up toe flexion in young men, Gait and Posture, 2023, 102(1): 112-117