2024年4月より理学療法学科の助教に着任しました,早尾啓志と申します。本学で博士課程まで修め,福島県内の急性期病院での臨床活動を経て,現在に至っております。
大学院での基礎研究では筋力トレーニングに伴う筋損傷の予防,臨床研究ではがん術後の身体組成(骨格筋,骨密度,体脂肪)の変化を調査してまいりました。
研究紹介:
1)伸張性収縮に伴う筋損傷
筋力トレーニングは収縮様式によって,短縮性,等尺性,伸張性収縮に分類されます。筋に力が入っている状態で筋が伸張される伸張性収縮は他の2つの収縮様式と比較して,筋力向上や筋肥大が生じやすい一方で,筋損傷や筋痛も生じやすいとされています.
図1. 電気刺激による伸張性収縮の実施(左図)とその後の筋損傷(右図).右図の赤丸で染まっているものが損傷筋線維.
2)薬剤を使用することで筋損傷の予防が可能
そこで,我々は損傷のメカニズムに着目し,薬剤の投与により伸張性収縮による筋損傷は予防が可能であることを明らかにしました(図2).
図2. 伸張性収縮に伴う筋損傷(b)が薬剤の投与により減少している(c)
3)薬剤を使用しないでも筋損傷の予防が可能
しかし,薬剤を用いての筋損傷の予防は臨床場面での実用性が乏しいため,1度目の伸張性収縮と比較して2度目の伸張性収縮で筋損傷が減弱する「繰り返し効果」に着目し研究を進めてまいりました.その結果,2回目までの間隔が長くなることで「繰り返し効果」は減弱することが明らかとなりました(図3).
図3. 伸張性収縮に伴う損傷筋線維数(左)と筋力低下(右)が2回目実施までの間隔が長くなるにつれて大きくなっている
「繰り返し効果」に関して,その作用機序は不明であるため基盤研究を進め,痛みの出にくい筋力トレーニングや体操の立案を目指していきます.
原著論文情報:
1. Hayao K, Tamaki H, Nakagawa K, Tamakoshi K, Takahashi H, Yotani K, Ogita F,Yamamoto N, Onishi H. Effects of Streptomycin Administration on Increases in Skeletal Muscle Fiber Permeability and Size Following Eccentric Muscle Contractions. Anat Rec (Hoboken). 2018;301(6):1096-1102.
2. Hayao K, Tamaki H, Tamakoshi K, Takahashi H, Onishi H. Myofiber Permeability and Force Production of Rat Muscles Following Eccentric Contractions: The Repeated Bout Effect Depends on the Interval. J Biomed Sci Eng, 2020;13(12), 275.