古山達郎さん(理学療法学科20期生、五泉中央病院)と北谷亮輔講師(理学療法学科、神経生理Lab、運動機能医科学研究所)の研究論文が国際誌『Neuroscience』に採択されました!
【研究内容の概要】
脳卒中後患者の約3割以上に半側空間無視という特異的な高次脳機能障害が残存するとされています。この半側空間無視の治療法として有名なプリズム適応には様々な課題に効果が転移することが知られていますが、プリズム適応による姿勢制御への転移効果には一貫性が乏しいことも報告されています。近年、プリズム適応の神経メカニズムに関するレビュー論文が報告され、後頭頂葉や小脳の活動が大きく関与していることが明らかにされています。そこで、本研究ではプリズム適応にこれらの脳部位に対する非侵襲的脳刺激法を併用して姿勢制御への転移効果に影響を与える神経メカニズムを検討しました。 本研究の結果、経頭蓋直流電気刺激を用いて右の後頭頂葉を陰極刺激しながらプリズム適応を行うと閉眼閉脚静止立位時の足圧中心位置が有意に右に変位しました。プリズム適応に重要とされる視覚や固有受容感覚だけでなく、姿勢制御に重要な体性感覚や前庭感覚などの多種の感覚情報を統合する後頭頂葉の活動が姿勢制御への転移効果に影響を与えることが示唆されました。
【研究者からのコメント】
半側空間無視は理学療法士が臨床現場で難渋する高次脳機能障害の一つだと思います。後頭頂葉の損傷以外に多くの脳部位が半側空間無視症状の出現やプリズム適応の効果に影響を与えることが報告されている中、本研究により後頭頂葉の活動が姿勢制御への転移効果に影響していることが確認されたことは、歩行や姿勢制御を専門とする理学療法士として臨床現場に活用できる有益な情報だと考えています。
原著論文情報
Kitatani R, Furuyama T, Otsuru N, Onishi H. Region-specific effects of transcranial direct current stimulation over posterior parietal cortex and cerebellum on standing postural displacement after prism adaptation. Neuroscience. 2024 July. doi: 10.1016/j.neuroscience.2024.05.043.