10th Asian Conference for Frailty and Sarcopenia 参加報告

2024年10月10日-11日にタイのバンコクで開催された10th Asian Conference for Frailty and Sarcopenia(ACFS)に井上達郎准教授(理学療法学科,運動機能医科学研究所,運動生理Lab),大学院修士課程2年の甘粕康太さん,前川健一郎さんが発表しました.

ACFSはアジア地域における高齢者医療と健康ついて議論する学術会議です.医師,理学療法士,栄養士など多職種の専門家が集まり,最新の研究成果を共有し,健康に関する問題に対処するための知見を深める場となっています.

 

大学院修士課程2年 甘粕康太さんのコメント

10th Asian Conference for Frailty and Sarcopeniaにてポスター発表を行って参りました.ポスター発表ではサルコペニアとPhase Angleの関係や,急性期脳卒中患者のアウトカムにサルコペニアおよびPhase Angleが与える影響について,国外の研究者とディスカッションを行う事が出来ました.非常にレベルの高い学会に参加出来た事で,現在の研究における課題や自分自身の目標について改めて考える機会となりました. 世界的にみても本邦をはじめとしてアジアの高齢化は著しく,Frailtyを有する高齢者に対する各国の取り組みを知る事が出来ました.また今回の学会ではAWGSのSarcopeniaの診断基準もUp dateされるなど多くの学びを得る事が出来ました.高齢者のリハビリテーションにおいてMuscle HealthおよびSarcopeniaの理解,診断,そして介入の重要性は更に増していくことが予測されます.高齢化が進む本邦においてMuscle HealthやSarcopeniaにおける研究を進めていく事は世界的にみても非常に意義深い事だと感じました.

<Title> Phase angle - defined sarcopenia predicts functional status and discharge outcomes in acute stroke patients

<Author> Kota Amakasu, Tatsuro Inoue, Kenichiro Maekawa, Natsumi Kamada, Araki Saito, Watanabe Yumiko

<概要> 近年,高齢化に伴いサルコペニアを有する高齢脳卒中患者も増加しています.サルコペニアの指標としてPhase Angleが注目されています.本研究では急性期脳卒中患者に対しPhase Angleを用いてサルコペニアを定義し,退院時のFunctional statusおよび転帰先に与える影響を検討しました.Phase angleにて定義された入院時のサルコペニアは退院時のFunctional statusおよび自宅退院の可能性を低下させる因子である事が明らかとなりました.Phase Angleは急性期脳卒中患者のアウトカムを予測する臨床上有用な指標になる可能性が示唆されました.

 

大学院修士課程2年 前川健一郎さんのコメント

タイ王国バンコクで開催されたACFS2024に参加しました。本会はアジアにおけるフレイルとサルコペニアの第10回記念学会で、2日間にわたってAWGSガイドラインの更新や、フレイルおよびサルコペニアに関する最新の研究成果が発表されました。特に、Sarcopenic dysphagia、Osteosarcopenia、Sarcopenic obesity、Oral frailtyといった各分野における詳細な診断、管理、予防の戦略が提示され、多くの学びを得ることができました。 また、海外で初めての口述発表を行うにあたり、発表前には多くの先生方から資料の作成指導や英語での発表方法に関する助言をいただきました。これにより、自身の研究が深まるとともに、研究に対する姿勢を改めて見直す機会となり、非常に有意義な時間を過ごすことができました。この発表が実現できたのも、井上先生をはじめ、多くの皆様からの多大なご支援のおかげであり、研究はチームで進めるものであることを強く実感しました。発表と質疑応答では、英語力の圧倒的な不足を痛感し、悔いが残る部分もありましたが、この経験を活かし、今後さらに成長していきたいと強く感じています。

<Title> Association Between Physical Activity and Swallowing Function in Patients with Hip Fracture

<Author> Kenichiro Maekawa, Kota Amakasu, Natsumi Kamada, Araki Saito, Tsutomu Okiyama, Tatsuro Inoue

<概要> 股関節近位部骨折患者における嚥下障害の有病率は高く、これらの嚥下障害は全身のサルコペニアと関連していると考えられています。嚥下障害に対しては、嚥下リハビリテーションに加えて全身運動が重要ですが、その詳細は分かっていません。本研究は入院中の身体活動(活動時間と歩数)が退院時の嚥下機能に及ぼす影響を検討しました。結果、回復期リハビリテーション病棟における入院中の身体活動時間は、退院時の嚥下機能に影響を与えておりアウトカムの予測因子として有用である可能性が示唆されました。