【授業の様子】サイエンスライティング:科学的な文章の作成とプレゼンテーション能力を磨く!!

理学療法学科では多くの選択科目が開講されており,学生が興味のある様々な分野の内容を学ぶことができます.今回は,3年次後期の選択科目である「サイエンスライティング」についてご紹介します.

本講義を担当している石浦章一先生は,東京大学や同志社大学などでも教鞭をとられており,サイエンスライティングに関わる分野の超専門家です.

(著書:サイエンスライティング超入門など)

本科目では,「上手な文章の書き方」や「わかりやすいプレゼンテーションの方法」を身に着けることを目的とした講義が行われ,理学療法士に必要な文章力やプレゼンテーション能力を磨くことができます.

実際に学生が作成した「科学ニュース」の記事を一部紹介します.

記事①:「苦み」をめぐる進化の物語 ~4億5000万年前から続く生存の知恵~(理学療法学科3年 市川颯汰)

あなたの苦手な食べ物は何だろうか。子どもの頃、ピーマンやゴーヤなどの苦みを嫌う人は多い。しかし、この「苦み」を感じる仕組みは、有害な物質を避けて生き延びるために必要なセンサーとして進化してきた。そして驚くべきことに、私たちと同じ苦みセンサーがエイやサメにも存在していることが明らかになった。

2024年4月9日、「苦みを感じる仕組みは、人類の祖先である原始的な魚類から進化し、エイやサメに受け継がれた可能性がある」という研究結果が、米国の学術雑誌Current Biologyに掲載された。明治大学などの研究チームが進めたこの研究では、苦みを感じるセンサーを作り出す遺伝子「TAS2R」が、アカエイやイヌザメといった軟骨魚類にも存在することを発見。この遺伝子は、口の中の「味蕾(みらい)」と呼ばれる感覚器官で働いていることも突き止めた。この発見から、約4億5000万年前に顎を獲得した原始的な魚類が、様々な食物を試す中で、有害なものを避けるための防衛機能として「苦みを感じる能力」を発達させたのではないかと考えられている。

本来は防衛機能だった苦みセンサーは、人類の進化とともに食文化の一部として発展してきた。忘年会シーズンが近づくこの時期、美味しいビールを味わえるのも、4億5000万年前の進化の賜物と言えるだろう。このように、私たちの日常は遥か太古の生物の知恵に支えられているのである。

引用:

Akihiro Itoigawa, Yasuka Toda, Shigehiro Kuraku and Yoshiro Ishimaru. Evolutionary origins of bitter taste receptors in jawed vertebrates. https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0960982224001672

 

記事②:ストレスによって食べる順序が変わる(理学療法学科3年 阿部紗弓)

滋賀医科大学神経難病研究センターの藤岡祐介助教の研究グループは,ストレスを受けたマウスがエサの場所が複数あっても1カ所に偏って摂食する行動を示すことを発見した.一般的にストレスで過食や拒食になることは知られているが,食べ方にも変化が生じることが明らかになった.

研究では,通常のマウスと弱いストレスを与えたマウスを用意し,半径30センチメートルの半円の形をした桶の中に入れ,同じエサが入った4つの餌場を等間隔に置いて食事の様子を観察した.その後,マイクロダイアリシス法を用いて快感や多幸感を与える神経伝達物質のひとつであるドーパミンの濃度を測定した.ストレスを受けたマウスは,エサを食べてもドーパミンの濃度がほとんど変わらず,4カ所の餌場のうち1カ所にこだわってエサを食べる傾向があった.通常のマウスはエサの場所に偏りがなく,ドーパミン濃度が上昇した.

藤岡祐介助教は,パーキンソン病の患者の食べ方にムラや変化があることから,この研究に着手した.報酬処理の変化に起因する食物嗜好の逸脱は,ストレス要因や神経精神疾患に関連する報酬システムの障害を示す指標として機能する可能性がある.

今後,この研究成果をヒトにも応用し,食べ方の変化を検出してアラートで知らせる端末を開発することで,報酬システムの変化を特徴とする神経精神疾患の理想的なバイオマーカーとして機能することが期待される.

引用:

Science portal:ストレスを感じると食べ方が変わる 滋賀医科大、マウスで実証

https://scienceportal.jst.go.jp/newsflash/20240606_n01/

Yusuke Fujioka et al. Frontiers in Neuroscience,2024

https://www.frontiersin.org/journals/neuroscience/articles/10.3389/fnins.2024.1349366/full

 

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